借金の債務整理トップページ > 【コラム36】貸金業者の現状

定期コラム

【コラム36】貸金業者の現状

武富士、第1回弁済の返還率は3.3%

今から2年前の2010年、貸金業者の最大手・武富士が倒産したのは、みなさんの記憶にも新しいところでしょう。この倒産により、武富士が会社更生法の申請を行い手続きがスタートしたことで、過払い金がある場合は4カ月以内に届け出なければならなくなりました。

武富士に対し過払い金の請求をしている人の数は10万人を超えます。負債総額は4,000億円以上あり、現時点で過払い金請求を受けている額は2兆円を超えているようです。本来なら2012年1月中旬から10月までの間に、これまでに過払い金請求をされていた方には順次返還され始める予定でした。

しかし、事業を受け継ぐはずだった韓国のA&Pフィナンシャルという消費者金融が、買収資金となる約280億円を用意できないということで手を引いてしまいました。新たにJトラストという会社が決定したものの、買収資金が30億円程減額されてしまうそうです。そのため、過払い金請求をしている方にも大きな影響を与えることとなるでしょう。

現在、武富士の第1回弁済は返還率が3.3%と決まりましたが、第2回目の返還率については今のところ未定です。また、実際に返還が行われるかどうかも怪しいとも言われています。仮に返済を行ったとしても、1回目の3.3%以上になる可能性はあり得ないでしょう。

首都圏ファイナンス、アエルの場合

もちろん、過払い金請求者にとって武富士だけが問題ではありません。武富士倒産の余波を受けた貸金業者は他にもあります。

2008年3月期には100億円を超える残高があった「首都圏ファイナンス」も、リーマン・ショックを契機に経営は悪化。2010年12月に破産の申し立てを行い、翌年2011年3月1日には、負債総額約31億円で破産決定を受けました。過払い金債権者は約2,500人になると言われています。

また、旧日立信販株式会社のアエル株式会社の場合、2003年に会社更生という手続きをしています。その後、民事再生を始め、2009年4月にその計画が認可されたものの、過払い返還率はわずか5%です。債権の一部はJ.P.モルガン信託銀行などの第3者に譲渡されたものの、その権利関係は不透明です。

ただし、アエルに関しては、債権届出が期限より遅れても受理されるため、今後も過払いがあると思われる方は、請求手続きを行えば債権確定から3カ月以内に過払い金総額の5%が支払われます。

SFコーポレーション、ネオラインキャピタルの場合

SFコーポレーション(旧三和ファイナンス)の場合、2011年8月に東京地方裁判所に破産手続き開始の申立てが受理されました。2012年3月5日には、財産状況報告集会が開かれる予定です。

SFコーポレーションは、過払い請求手続きの多くに対して、取引履歴の精査・引き直し計算は完了していると言っていますが、司法関係者の間では、手続き当初から1円も返還されないだろうと言われています。

2012年1月には、ネオラインキャピタル株式会社が「グループ経営の効率化を図るため」という理由から、全株式を第3者に譲渡したとして、新商号はクロスシード株式会社となりました。1月31日の取締役会において、貸金業廃止の決議がされ、新規申し込みの受け付け中止も同時に伝えられました。

会社更生法とは会社を立て直すための手続き

ちなみに、会社更生法とは『経営困難ではあるが再建の見込みのある株式会社について、事業の維持・更生を目的としてなされる会社更生手続きについて規定する法律』(大辞泉)で、あくまでも会社を立て直すための手続きです。

●会社更生の流れ

  1. 手続開始・保全処分の申立て
  2. 保全命令
  3. 手続開始の決定
    ※過払い金がある場合は、開始決定から4カ月以内に債権届出をする。
  4. 第1回関係人集会の開催
  5. 更生計画案の作成
    ※利害関係人の権利の処理と会社事業の維持、債権の条件などを決めます。
  6. 更生計画案の提出
  7. 第2回・第3回関係人集会
  8. 更生計画認可の決定
  9. 弁済の開始
  10. 更生計画遂行
  11. 更生手続終結決定

会社更生は個人の債務整理と異なり、終結するまでの期間が長期に及びます。(3)の手続き開始決定から(8)の更生計画認可の決定までに平均で2年強、さらに認可の決定から(11)の更生手続終結決定まで平均で10年ほどかかります。

このままでは100万円の過払い金があっても受け取るのは数万円?!

とは言え、貸金業者の経営が悪化し、会社更生や民事再生の手続きを行えば、武富士の3.3%、アエルの5%など低い返還率が決定されるケースが多くなっている現状です。そうなっては、100万円の過払いがあったとしても、実際に戻ってくるのはわずか数万円です。

過去に更生手続きをしたロプロも3%でしたが、会社更生手続きをすると概ね8~9割が免責されてしまうため、このような低い返還率となってしまうわけです。

法定金利を超えて借金をしていた方は、完済していたとしても金利分は過払いになっているはずです。今後も会社更生や民事再生をする貸金業者は増えるでしょう。ですので、過払い金があるであろう方は、一刻も早く過払い金請求の手続きをするようおすすめします。

また、現時点では会社更生・民事再生をしていない貸金業者であっても、過払い金発生の可能性があるのであれば、とにかく早めに手続きをしたほうがいいでしょう。

訴訟を起こせば時間はかかるが返還額は増える

過払い金の請求には期限があります。最後に返済をした日から10年が過ぎてしまうと、請求する権利が消滅してしまいます。ですので、まずは無料相談を利用して、過払い金がどの程度発生しているかを専門家に出してもらいましょう。

また、過払い金請求に関して、通常は弁護士や司法書士があなたの代理人として、直接業者とやり取りをして和解の書面を交わします。

しかし、訴訟を起こし裁判所を使って手続きを進めるのも一考です。返還が決定するまでには時間がかかってしまうものの、貸金業者と直接交渉するよりも、返還額が多くなる場合が多いからです。

もちろん、専門家にその手続きを委任してしまえば、あなたが直接裁判所に出頭する必要もありません。また、業者との間で条件が合えば、訴訟の途中であっても和解へと手続きを変更することも可能です。

いずれにせよ、法改正が行われる以前に借入をしていた方は、一度、早めに弁護士や司法書士にご相談してみてはいかがでしょうか。払い過ぎたお金は取り戻せますし、違法金利による貸金業者の儲けですから取り戻すべきです。どうぞ一歩踏み出してみてください。