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定期コラム

【コラム32】新たな手口「金貨金融」

法定金利の最大約83倍もの高金利で貸し付け

新手の詐欺が次々と現れる金融業界ですが、「金貨金融」という新たなヤミ金が横行しているのをご存知ですか?

2011年の6月に出資法違反の容疑で逮捕された事件は、全国初立件の金貨金融詐欺でした。この事件では、金貨販売店「G&P」(港区新橋)の経営者らが逮捕されましたが、覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

金貨金融とは、金貨を販売したように装い、実質上の高金利を取る新手の詐欺です。今回の事件では、法定金利の最大約83倍もの高金利で貸し付けを行っていたことが明らかになりました。

逮捕された容疑者らは、スポーツ新聞に「ブラックな方でも可」という広告を掲載し、1年2カ月で215人に約7500万円を貸し付けたといいます。その間に受け取った利息が1870万円だというのですから、いかに高金利かがおわかりいただけるでしょう。

しかし、顧客の中には、多重債務者以外にも大手企業の社員や公務員もいたというのですから、これには私たちも驚きました。

札幌簡裁では「暴利の融資」と認め契約無効の言い渡し

クレジットカードのショッピング枠を利用して現金化する詐欺が一段落したかと思えば、今度は金貨売買を装った詐欺・・・。本当にイタチごっこのようですが、こうした詐欺に騙されてしまう人も相変わらず後を絶たないのも事実です。

多重債務に苦しみ毎月の返済に困っているとはいえ、この手の詐欺に騙されないでください。そのために、相手の手口を知っておくことが大切です。

今回の金貨金融の場合、まずお金を借りたいという人(Aさん)に、金貨を市場価格より高額で買わせます。代金は後払いなので、切羽詰まった利用者はつい借りてしまうといいます。

そして、Aさんは業者から紹介された貴金属店に金貨を持っていき換金します。当然、金貨は購入した金額よりも低くなっています。つまり、この時の差額を業者は実質的な取り分として儲けているわけです。

2011年1月14日の札幌簡裁では、金貨金融詐欺に対し「暴利の融資」と認め契約の無効を言い渡しました。この事件の実態を知るのに、札幌司法書士会の「金貨金融取引に関する判決を受けての声明」を読めば一目瞭然です。

「平成23年1月14日札幌簡易裁判所において、いわゆる金貨金融と呼ばれる、金貨売買を装い、経済的困窮者の窮状に付け込み、年利1500~2500%にも上る暴利を得て食い物にしようとするヤミ金類似の取引形態について、これを公序良俗に反し無効であるとする判決があった。(平成22年(ハ)第21210号売買代金請求事件) この事件では、資金に困窮する顧客を「代金後払い」「即現金化」の宣伝文句でおびき寄せ、即時に換金が可能な金貨(時価42,000円相当)を代金後払いで売渡し、市場相場の約1.5倍の代金65,600円を10日後の代金支払期日に支払わせようとする契約であった。この差額を金利に換算すると、年利約1996%にも上り、法定利息(元金10万円未満の場合年利20%が上限)の約100倍もの暴利を得ようとするものである。」

つまり、業者から65,600円で金貨をツケで購入し、紹介された別の業者に持っていくと、42,000円の現金と交換してくれました。ところが、10日後にはツケの65,600円を払わなければならず、わずか10日で23,600円の金利を払ったのと同じ計算となります。

業者からすればお金を貸したわけではなく、金貨を販売したにすぎないという言い分です。しかし、契約無効となる判決と出資法違反による逮捕という現実を目の当たりにすれば、ただの金貨販売でないことは明らかです。

キャッシュバック方式やや買取屋方式

国民生活センターによれば、2008年10月~2011年11月までに金貨金融に関する相談が計150件寄せられたといいます。

札幌の金貨金融詐欺の実例では、オーストリア政府発行のウィーン金貨2枚を31,000円で購入させ、換金した額は17,500円だといいます。この場合、1週間で約80%、年利にすると約4,000%という驚きの金利になっています。

こうした業者の広告には、「破産、ブラックの方でも現金がすぐにできます」「30万円まで即サポート」などという謳い文句を並べ、お金に困っている人の足元につけ込みます。

後払いだからと、即現金化だからとついつい相手の手口にのってしまったら最後です。ちなみに、「クレジットカード現金化」についても少々説明しておきます。

この手口は、クレジットカードのショッピング枠を現金化するというもので、すぐにお金を手にすることができる仕組みになっています。

例えば、あなたのクレジットカードにショッピング枠が20万円あるとします。すると、業者から20万円分の商品を購入します。その商品は、とても20万円しそうもない100均ショップにでも売っているような安価な商品です。ボールペンでもいいでしょう。

すると、あなたの口座には業者の手数料5万円を引いた15万円の現金が即日振り込まれます。「キャッシュバック方式」と呼ばれる手口です。そして、1カ月後には、クレジットカード会社から20万円の請求書が届き、あなたは20万円支払うことになります。業者から言わせれば、あなたは5万円という高額なボールペンを買ったにすぎないことになってしまうわけです。

しかし、もっと悪質な業者になると、あなたのクレジットカードのショッピング枠を利用し、ボールペンを20万円で買わせておき、15万円の振り込みをしてこないという、キャッシュバックを装った手口です。

「買取屋方式」もキャッシュバック方式と同じく、クレジットカードの現金化ですが、こうした手口については消費者庁も明確にNGを出しています。ただし、現時点の法律ではこうした業者を取り締まることができなかったのですが、今回、金貨金融詐欺の容疑者が逮捕されたことは、私たち法律の専門家にとっても光明でした。

クレジットカードの現金化で要注意なのは、高金利と同様なお金をとられるだけでなく、クレジットカード会社によっては、カードが使えなくなるという可能性もあります。

いずれにせよ、多重債務で苦しんでいたり、お金に困って借金をしようかと迷っていたりするのなら、貸金業者に行く前に、弁護士や司法書士など法律の専門家にまずは相談しましょう。間違っても今回お話ししたような金貨金融やクレジットカードの現金化のようなヤミ金に手を出さないよう、心を強く持ってください。「借りたら返す」は原則です。しかし、本当に返せないのなら、一人で悩んでいないで専門家に相談することが先決です。