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【コラム29】自己破産をしても残される自由財産の範囲とは?

生活に必要な最低限の財産は差押禁止

自己破産は、返済の苦しい多重債務から逃れる方法のひとつ。裁判所へ申立てを行い、免責が許可されることによって、税金などの一部の債務を除き、借金の返済が免除されゼロになる制度です。

ただし、住民税や自動車税をはじめ、固定資産税などの税金や健康保険料、公共料金、罰金、重大過失による損害賠償などは免責対象とはなりませんので注意が必要です。

ご相談の際に、「自己破産をすると所有していた財産は全てなくなってしまうのでしょうか?」という質問をよく受けます。

答えは、『自己破産しても生活に必要最低限とされる一部の財産は手元に残ります』です。そして、このような財産を「自由財産(差押禁止財産)」と呼んでいます。

自由財産とは?

破産手続開始決定(破産宣告)後、債権者である貸金業者に財産などを差し押さえされることなく、破産者が自由に管理できる財産が「自由財産」です。

自由財産は破産法で定められていますが、平成17年に改正された新破産法では、自由財産拡張制度が設けられました。この改正により、裁判所が管財人の意見を聞いた上で自由財産の範囲が拡大されるようになったため、旧法よりも自己破産後の生活で経済的な再起がしやすくなりました。

参考までに、個人の破産手続きで換価などをしない自由財産の例をあげておきます(東京地方裁判所)。

  1. 99万円以下の現金
  2. 残高20万円以下の預貯金
  3. 見込み額が20万円以下の生命保険解約返戻金
  4. 査定価格が20万円以下の自動車
  5. 居住用家屋の敷金債権
  6. 電話加入権
  7. 支払見込額が160万円相当額以下である退職金債権
  8. 支払見込額が160万円相当額超である退職金債権の7/8
  9. 家財道具
  10. 差押禁止されている動産または債権
  11. 破産管財人が放棄した財産

自由財産になる家財道具とは?

(9)の家財道具といっても様々ありますので、その詳細は以下のように決められています。

*差押禁止財産
洋服ダンス、ベッド、食器棚、食器具、調理器具、冷暖房器具(エアコンは除く)、DVD(ソフト)、CD(ソフト)、漫画、ゲーム、その他、農業や漁業、大工など職業に必要なものや生活するのに必要な衣類などは差押禁止財産。

*1点のみ差押禁止財産(複数ある場合は1点のみが対象)
テレビ、ビデオデッキ、DVDレコーダー、ラジオ、パソコン、冷蔵庫、エアコン、掃除機、洗濯機、電子レンジ、湯沸かし器、鏡台

なお、破産者の生活状況や今後の収入見込み、その他の事情なども考慮して自由財産の拡張をする場合もあり、この辺は地方裁判所により多少異なります。

自動車をローンで購入している場合はどうなるか?

所有している自動車は上記の例のとおり、査定価格が20万円以下のものについては処分対象外となります。ですので、他の財産を含めて99万円以下であれば自動車を残せる可能性があります。ただし、裁判所によって残せるかどうかは異なります。

では、もし車のローンが残っている場合はどうなるのでしょうか。

自己破産では、原則、一部の債権者のみに返済するということができません。ですので、自動車ローンが残っている場合、それだけを支払い続けるということはできませんので、原則として処分されてしまいます。ただし、例外として自動車を維持する方法もあります。

  • 他者にローンを支払ってもらう方法
  • 他者にローン中の自動車を時価で買い取ってもらいその人から借りる方法
    (どちらの方法でもローン会社の同意が必要となります。)

ということで、破産手続開始決定後に免責許可が得られれば、税金などの一部の債権を除き、それまでの借金は支払いが免除され、手元には自由財産として最低限の生活に必要な財産が残ります。

しかし、自己破産の免責が許可されない場合はありますが、新破産法によって手続が簡略化されたため、通常は破産申立をすれば原則同時に免責許可の申立てがされたとみなされ、破産手続開始決定後に免責が許可されるようになりました。

自己破産の免責が許可されない場合(自己破産免責不許可事由)

では、参考までに自己破産の免責が許可されない事由も列記しておきます。

  1. 次のイ~ハの確定日から7年以内に免責許可の申立てがあった場合。
    イ.免責許可決定
    ロ.民事再生法の給与所得者等再生における再生計画認可決定
    ハ.民事再生法のハードシップ免責の決定に係る再生計画認可決定
  2. 浪費やギャンブル等によって、著しく財産を減少させたり、過大な借金を負担した場合。ただし、破産原因が浪費やパチンコ・競輪・競馬などによる場合であっても、裁量免責が認められることもあります。
  3. 破産手続きの開始を遅らせる目的で不利な条件で債務を負担したり、クレジットカード・ローンなどで商品を購入、転売、質入れをして現金を獲得した場合。
  4. 破産手続開始決定日から過去1年前までの間に、既に支払不能の破産状態にあるのに無いかのように債権者を騙してさらに金銭を借入れたり、信用取引によって財産を取得したりしたような場合。
  5. 破産者の説明義務、重要財産開示義務、または裁判所または破産管財人が行う免責調査に対する協力義務など破産法に定める義務に違反した場合。
  6. 破産財団に属し又は属すべき財産を隠したり、壊したり、その財産価値を不当に減少させるような行為をした場合。
  7. 既に支払不能の破産状態であるにも関わらず、債権者に隠して借金をしたり、クレジットカードを利用した場合。
  8. 業務や財産の状況に関する帳簿や書類その他の物件を隠滅、偽造、または変造した場合。
  9. 裁判所に対して、虚偽の債権者一覧表を提出したり、破産手続において裁判所が行う破産手続きの調査において、説明を拒んだり、虚偽の説明をしたりした場合。
  10. 不正な手段で破産管財人などの職務を妨害した場合。

上記に該当する免責不許可事由がある場合でも、破産開始手続に至った経緯やその他の事情を考慮し、免責を許可することが相当であると認める場合は、裁判所の裁量によって免責許可の決定をすることができます。

いずれにせよ、自己破産は申立てをすれば全ての人が借金を免除してもらえる制度ではありません。しかし、自己破産はその後の経済的な更生が目的であるため、裁判所の裁量で免責されたり、債務者の個々の事情を考慮して自由財産が拡大されたりすることがあります。

多重債務に苦しみ自己破産をしようかどうか迷っている、持ち家は自己破産するとどうなるかなど、自己破産に関して何か心配事などがあるようでしたら、一人で悩んでいないで、まずは弁護士や司法書士などの専門家に相談してみましょう。