定期コラム
【コラム28】自己破産による仕事への影響
資格制限を受ける職業は160種以上
「自己破産はしたいけど、仕事に影響しないか心配・・・」
こんな風に考えている方も多いのではないでしょうか? 確かに自己破産をすれば、まったく仕事に影響しないわけではありません。では、どのような影響があるのでしょう。
自己破産をすると、破産法ではなく制限法令により資格や職業に制限が設けられます。その制限は、お客様のお金や財産を扱う仕事などを中心に160種以上になります。では、制限を受ける資格者と制限を設けている法令を挙げてみましょう。
- 弁護士・・・弁護士法第7条5
- 司法書士・・・司法書士法第5条3
- 弁理士・・・弁理士法第8条10
- 不動産鑑定士・・・不動産の鑑定評価に関する法律第16条
- 公認会計士・・・公認会計士法第4条5
- 税理士・・・税理士法第4条3
- 社会保険労務士・・・社会保険労務士法第5条3
- 行政書士・・・行政書士法第2条の2
- 中小企業診断士・・・中小企業診断士の登録及び試験に関する規則第5条の3
- 通関士・・・通関業法第31条2
- 宅地建物取引主任者・・・宅地建物取引業法第18条3
- 旅行業務取扱管理者・・・旅行業法第11条の2
- 国家公安委員会委員・・・公安審査委員会設置法第7条、第8条
- 教育委員会委員・・・地方教育行政の組織及び運営に関する法律第4条
- 商工会議所会員・・・商工会議所法第15条
- 証券外務員・・・金融商品取引法第64条2
- 金融商品取引業・・・金融商品取引法第29条4の2のロ
- 信用金庫等の役員・・・信用金庫法第34条2
- 日本銀行の役員・・・日本銀行法第25条の1
- 漁船保険組合の組合員・・・漁船損害等補償法第24条
- 投資顧問業・・・有価証券に係わる投資顧問業の規制に関する法律第7条
- 貸金業者・・・貸金業の規制等に関する法律第6条
- 生命保険募集人及び損害保険代理店・・・保険業法第279条
- 一般労働者派遣事業者・・・労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律第6条
- 旅行業者・・・旅行業者法第6条
- 警備員・・・警備業法第7条
- 不動産鑑定業者・・・不動産の鑑定評価に関する法律第25条
- 測量業者・・・測量法第55条の6
- 風俗営業を営もうとする者・・・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第4条
- 産業廃棄物処理業者・・・産業物の処理及び清掃に関する法律第14条の2
- 通関業・・・通関業法第6条
- 調教師・騎手・・・競馬法執行規則第3条
- 卸売業者・・・卸売市場法第17条 など
制限を受ける職業が意外に多いと驚かれたのではないでしょうか。この他にも、自動車運転代行業、マンション管理業、後見人、遺言執行者、一般競争入札参加者など127種があります。
では、法令を少し見てみましょう。
弁護士の場合、弁護士法第7条の5には以下のように定めてあります。
(弁護士の欠格事由)
第7条 次に掲げる者は、第4条、第5条及び前条の規定にかかわらず、弁護士となる資格を有しない。
- 禁錮以上の刑に処せられた者
- 弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
- 懲戒の処分により、弁護士若しくは外国法事務弁護士であつて除名され、弁理士であつて業務を禁止され、公認会計士であつて登録を抹消され、税理士であつて業務を禁止され、又は公務員であつて免職され、その処分を受けた日から3年を経過しない者
- 成年被後見人又は被保佐人
- 破産者であつて復権を得ない者
税理士の場合、税理士法第4条3に以下のように定めてあります。
(欠格条項)
第4条 次の各号のいずれかに該当する者は、前条の規定にかかわらず、税理士となる資格を有しない。
- 未成年者
- 成年被後見人又は被保佐人
- 破産者で復権を得ないもの
(4~10は省略)
こうしてみると、「公務員は制限を受けないの?」と思われた方もいるのではないでしょうか?
資格制限は受けない公務員
公務員には、「国家公務員法」「地方公務員法」があり、公務員として職につけないケースが記載されています。
- 国家公務員の場合
- 成年被後見人又は被保佐人
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
- 懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者
- 人事院の人事官又は事務総長の職にあつて、第109条から第111条までに規定する罪を犯し刑に処せられた者
- 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
- 地方公務員の場合
- 成年被後見人又は被保佐人
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
- 懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者
- 人事院の人事官又は事務総長の職にあつて、第109条から第111条までに規定する罪を犯し刑に処せられた者
- 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
以上、国家公務員も地方公務員も、それぞれ5つの事由以外は資格制限を受けることはありません。ですので、自己破産者に関しては、何ら記載されていないため制限を受けないということになります。
職場に居づらくも自己破産は解雇の事由にはならない
とは言え、自己破産をしたことで「職場に居づらい」という理由から退職されるケースは案外多いのですが、決して自己破産を事由に解雇されることはありません。
これは一般のサラリーマンにも言えることです。制限を受ける資格者以外は、自己破産を理由に会社が破産者を解雇することはできません。
また、自己破産したからと会社に借入をしていなければ、裁判所から勤務先に通知が行くことはありません。ただし、国が発行している官報には氏名と住所が載ってしまいますので、会社の人が官報を見る可能性はあります。では、制限を受ける資格者は、自己破産をしたら2度と同じ職業に就けないのでしょうか?
資格制限は、免責許可が決定することで「復権」できます。復権は権利を回復することです。復権をしたからといって税金や損害賠償債務などはそのまま残りますが、また資格を生かして仕事を再開することができますので、新しい人生をスタートすることができます。ですので、資格制限がある職業の方でも、多重債務で苦しんでいるのであれば、自己破産の道を考えてみるのもいいのではないでしょうか。