定期コラム
【コラム20】借金に時効はあるのか?
時効が成立するための3つの条件
借金の返済が苦しい方の中には、こんな風に考えた方もいるはずです。
「借金にも時効があったらなぁ・・・」
でも、そんなに虫のいい話があるはずない・・・。一般的には、そう考えるのが自然です。では、本当に借金には時効がないのでしょうか?
実は、銀行や消費者金融などの貸金業者からお金を借りた際、一定期間返さず、借りた相手からも請求がない場合、返済義務はなくなります。これを「借金の時効」といいます。
もちろん、返済が滞っているのに銀行や貸金業者などの債権者が催促をしないということは通常ではあり得ません。しかし、以下の3つの条件を満たせば時効は成立してしまいます。
- 借金を定められた年数、返済していないこと。
- 時効の期間が振り出しに戻っていないこと。
- 時効の期間を過ぎ、時効の援用手続きをすること。
そこで今回は、どのようにして時効が成立するのかを詳しくご説明したいと思います。まず、時効が成立する年数ですが、これは借金だけに限らず【時効】を成立させるには、一定の期間を経過していなければなりません。
貸金業者からの借金は5年が時効
時効が成立するには「消滅時効」「取得時効」という、2種類の期間が関係してきます。
*消滅時効とは?
返済の約束をした日から法律で定められた一定の期間、返済をしなければ債務者であるみなさんの借金の返済義務がなくなるというもの。
*取得時効とは?
他人の物品を一定年数占有することによって、自分のものになるというもの。
取得時効は借金の時効とは関係がありませんので、今回は詳しい説明を省略します。借金など債権の時効は「消滅時効」となり、民法においてその期間は10年となっていますが、借りた相手によって時効の年数が異なります。
- 消費者金融や銀行などの法人から借りた場合:5年
- 親戚や友人など個人から借りた場合:10年
ただし、個人から借りた場合でも、商事行為としての5年が適用される場合があります。 では、その“5年”とは、いつから数えての5年なのでしょうか?
- 借りた時に決めた返済期日に返済しなかった場合、その翌日から数える。
- 返済期日が決まっていない場合、最後に返済した翌日から数える。
こうして見てみると、時効の手続きを行う際に時効の期間を間違えないためにも、“ちょうど5年”ではなく、時効であろう時期よりも、ある程度の期間が経過してから手続きを行ったほうが良いと言えます。
時効の期間が振り出しになってしまう 「時効の中断」
先にご説明したとおり、お金を借りて返済をしないまま5年が過ぎ、債務者であるみなさんが時効の手続きを行い時効が成立することで、借りたお金の返済義務はなくなります。
時効が成立してしまうと、業者にとっては貸したお金を返してもらえないということになります。これでは商売にならないでしょう。では、債権者にとって時効にさせないための方法はないのでしょうか?
それが「時効の中断」です。
時効の中断には、自然中断と法定中断がありますが、自然中断は取得時効特有の方法ですのでここでは省略いたします。
借金の時効に関する法定中断事由は以下の3つとなります。
1.債務者に対して、以下のような請求を行った場合
- 銀行や貸金業者、クレジット会社などが裁判所を通して支払い催促や訴訟などを行った場合(民法147条)。和解の同意や調停の申立ても同様です。
- 内容証明郵便で借金の催促を行い、請求を受けてから6カ月以内に裁判上の請求がされた場合。
2.差押え、仮差押え、仮処分
- 債権者である貸金業者などが裁判所に給与などの差押えの申立てを行った場合。
3.債務者の承認
- 「返済をもう少し待って欲しい」「絶対返しますから」など、債務者であるみなさんが自分に借金の返済義務があることを認める発言をした場合。
- 「借金を減額します」「少しだけでも返済して欲しい」「支払いを猶予します」などと言われ、一度でも返済した場合。
このように、債務者であるみなさんが時効の成立を待つ場合、借金を認めるような発言や署名捺印をしたり、少しでも返済をしたりしてしまうと時効の中断が適用されてしまいます。
また、債権者である貸金業者から手紙やハガキ、電話で催促の連絡があっても、裁判所を介さない連絡であれば時効が中断されることはありません。ですので、貸金業者からの請求方法や対応に対して、適切な対処をしないと時効期間が振り出しに戻ってしまうこともあります。「つい、うっかり・・・」とならないよう要注意です。
時効期間が経過しただけでは「時効」は成立しない
では、債権者から時効を中断する行為がなく時効に該当する期間が経過すれば、晴れて時効は成立するのでしょうか?
残念ながら、これだけでは借金の返済義務は消滅しません。時効を成立させるには、債権者である貸金業者に対して、「時効が成立しましたので、返済義務はなくなりました」と意志表示することが必要です。これを「時効の援用」といいます。
手続きの方法は、貸金業者に時効の成立を知らせる通知書を内容証明郵便で送ります。通知書は、ご自身で作成することも可能ですが、時効の算出法に間違いがあったり、時効の中断が発生している場合もあったりするため、弁護士や司法書士などの専門家に相談されたほうが確実でしょう。
ちなみに、主債務者であるみなさんの時効の援用が認められた場合、連帯保証人にも時効の成立は適用されます。
連帯保証人は、主債務(借金をした本人の借金)と保障債務(連帯保証人としての借金)の両方に対しての時効の援用手続きを行うことが可能ですので、時効の援用が成立すれば、連帯保証人の返済義務はなくなります。
また、主債務者が時効成立のための期間が過ぎているのに借金の返済をしてしまった場合には、時効の援用の申立てを行うことはできませんので注意が必要です。ただし、この場合でも、連帯保証人は自分の返済義務に対しての時効の援用を申立てることは可能となります。
借りたお金を返すというのは当然のことですが、ご紹介したとおり借金の時効が成立すると、返済義務がなくなる場合がありますので、知っておくと役に立つこともあるでしょう。今ある借金の時効が成立する見込みがありそうな方は、早めに弁護士や司法書士などの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。