借金の債務整理トップページ > 【コラム15】自己破産したら、税金や社会保険料は払わなくていいの?

定期コラム

【コラム15】自己破産したら、税金や社会保険料は払わなくていいの?

税金や保険料の支払い義務はなくなりません!

一般の方でも債務整理という言葉をよく耳にするようになり、多重債務に陥ってしまった債務者の方が、まず思い浮かべるのが「債務整理をすれば借金地獄から解放されるかも・・・」ということではないでしょうか。

また、自己破産、特定調停、任意整理、民事再生の4種類ある債務整理の中でも、病気やリストラなどで収入が激減し返済の目途が全くたたなくなってしまった場合や、借金の額が多すぎて返済が困難になってしまった場合に考える債務整理が自己破産だという方も少なくありません。

そこで今回は、自己破産をしたら税金や社会保険料はどうなるのか?についてお話しします。「借金が返せなくて自己破産するんだから、税金や社会保険なんて払えるわけないじゃない」という方も案外多いので、是非参考にしていただければと思います。

まず、結論からお伝えしましょう。 債務者であるみなさんは、消費者金融などの貸金業者からの借金以外にも、毎月、国民健康保険料や年金などを支払っていると思います。しかし、自己破産をしても、これらの保険料や税金の支払いがなくなることはありません。

納税は国民の義務

自己破産の申立てを行い、消費者金融などの貸金業者からの借金の免責決定を受ければ借金の返済はなくなりますが、同時に車や家などの財産を処分して弁済に充てることとなります。

ご存知の方も多いとは思いますが、自己破産は“借金”という重い肩の荷をおろすことができる代わりに、“財産の処分”というリスクを払うことになります。

となると、借金が返せなくて自己破産して、しかも財産まで処分したのに、どうして税金や社会保険料は払わないといけないのか・・・と、自己破産する方からすれば納得できないかもしれません。

しかし、納税について憲法では以下のように定められています。

日本国憲法第30条 「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」

つまり、納税は「勤労」「教育」と同じく、私たち国民に課せられた義務となり、これを『国民の三大義務』と呼んでいます。

もちろん、この3つの義務を果たす代わりに、基本的人権など様々な権利が保障されています。それに、私たちが税金や社会保険料などを払うことで、道路や水道の整備、警察や消防、医療、福祉などの施設やサービスを利用することができるわけです。

ですので、自己破産したことにより消費者金融などから借りた一般債権は免責されたとしても、税金の支払い義務はなくならず、自己破産後も支払わなければいけないのです。

このように免責が決定しても払わなければならない債務のことを「非免責債権」と呼び、破産法では免責の対象外とされています。

税金、健康保険、年金を滞納していた場合

はじめにご説明したように、税金は免責されないため支払い続けなければならないことをご説明しましたが、滞納していた未納分の支払い義務については、それぞれどうなるのかを見てみましょう。

●税金を滞納している場合

所得税や住民税、自動車税、固定資産税などは非免責債権として、滞納していても支払い義務がなくなることはありませんので支払わなければいけません。 税金の他にも免責されないものとして、ガス・水道・電気などの公共料金や罰金、お子様がいる場合、養育者や扶養義務者の負担すべき費用などもあります。

●国民健康保険料を滞納している場合

国民健康保険料についても、国民がそれぞれ資金を出し合って支えているものですので、支払いは免除されません。自己破産によって免責を受けても納める義務がなくなることはないのです。

●国民年金を滞納している場合

国民年金の場合は、納めなければその分が年金受給額から差し引かれるシステムです。 したがって、将来年金をもらわなくても良い・減額された年金でも良いということなら、納めなくても構わないでしょう。但し、現在は2年間で時効となります。それを過ぎてしまうと過去未納分の年金を納めたくても納める権利を失いますので、よく考えてからにしましょう。

滞納分の負担を少しでも軽減するには

これまでの話を聞く限りでは、自己破産を考えていた方にとって頭が痛いだけかもしれません。いくら自己破産して借金がなくなったとしても、それぞれ滞納していた税金は変わらず支払わなければならないのであれば、困窮し続けることには変わらないのですから。 では、自己破産後、少しでも生活を安定させるための良い方法はないのでしょうか?

●滞納していた税金を分割での支払う

どうしても支払いが困難な場合は、市町村役場や税務署・社会保険事務所等の相談窓口で、今後どうやって支払いをしていくか話し合いをすることで、支払いを分割にしてもらえることもあります。但し、この場合は分割で納めるため、時効(5年)は成立しません。

●税金の延滞金を減免

自己破産などで税金を支払うことが困難になった場合には、延滞金及び利息分は減免してもらえる場合があります。このことは、地方税法第323条に定められています。 【市町村民税の減免】  市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において市町村民税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、市町村民税を減免することができる。

●一定要件を満たす場合には滞納処分の停止

地方税法第15条7項には、以下のような一定の要件を満たす場合、滞納処分の停止がなされることが定められています。

  1. 地方団体の長は、滞納者につき次の各号の一に該当する事実があると認めるときは、滞納処分の執行を停止することができる。
    *滞納処分をすることができる財産がないとき。
    *滞納処分をすることにより、その生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき。
    *その所在及び滞納処分をすることができる財産がともに不明であるとき。
  2. 地方団体の長は、前項の規定により滞納処分の執行を停止したときは、その旨を滞納者に通知しなければならない。
  3. 地方団体の長は、第1項第2号の規定により滞納処分の執行を停止した場合において、その停止に係る地方団体の徴収金について差し押えた財産があるときは、その差押を解除しなければならない。
  4. 第1項の規定により滞納処分の執行を停止した地方団体の徴収金を納付し、又は納入する義務は、その執行の停止が3年間継続したときは消滅する。
  5. 第1項第1号の規定により滞納処分の執行を停止した場合において、地方団体の長は、前項の規定にかかわらず、その地方団体の徴収金を納付し、又は納入する義務を直ちに消滅させることができる。

以上のように、自己破産後の生活に困った場合には、国も何らかの措置を考えていますので、決して悲観的になることなく、生活を立て直すためにも、これらの方法を利用することを考えてみるのも一考です。

但し、ここに書いた事項は、いずれも各地方自治体によって異なる場合がありますので、一度相談されてみるといいでしょう。