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【コラム12】いきなり差し押さえられることはあるのか?

債務者の財産の事実上・法律上の処分を禁止する行為

前回のコラムで、銀行のカードローンも任意整理ができるということをお話しましたが、その際、カードローンによる借金の任意整理開始通知を銀行に送ることにより、預金口座が凍結されると説明しました。

ここで出てきた「凍結」という言葉。借金に関連する言葉として、凍結に似たような言葉でよく耳にするのが、「差押え」という言葉ではないでしょうか。

一見、口座から預金の引き出しをできなくなるという点では同じように思えます。しかし、凍結は資産や資金などの使用・移動を一時禁じることですが、「差押え」は大辞泉で引いてみるとこう説明してあります。

  1. 国家権力により、特定の物または権利について私人の処分を禁止する行為。
  2. 民事執行法上、私人の金銭債権について、国の執行機関が債務者の財産の事実上・法律上の処分を禁止する行為。
  3. 行政法上、国税滞納処分の一つとして、滞納者の財産を強制的に取得すること。
  4. 刑事訴訟法上の押収の一つ。証拠物または没収すべきものを裁判所が強制的に取得する裁判。また、その執行。

こうしてみると、借金の返済や納税など、払うべきもの、返すべきものを返さなかったときに、債務者の財産の処分を禁止、滞納者の財産の強制取得などを行うことを「差押え」と呼んでいます。

いきなり差押えられることは原則的になし

債務整理の場合、返済が滞ってしまうことで給与を差し押さえられるケースもあります。 そこで今回は、返済が滞ってしまった場合、いきなり差押えられることがあるのか?についてお話をします。

現在、返済が滞っていることで、貸金業者から「すぐに差押えをかけるぞ!」などと脅されていたとしましょう。しかし、結論から言えば、いきなり差し押さえられることは原則的にありません。

では、どのような時に差押えをされるのかは、以下のような場合です。

  1. 債務整理の前に、提訴されて判決を取られている場合
  2. 債務整理の前に、公正証書を作成している場合

ただし、上記のような場合でも、必ず差し押さえられるというわけではなく、その危険性があるということです。また、4種類ある債務整理であれば、一律に差押えの危険があるわけではありません。

例えば、個人再生を選んだ場合、裁判所に申し立てをし手続き開始が決定すると、以後、債権者は債務者に対して差押えができなくなります。

家電製品などの財産は、法律で差押えが禁止されている

また、自己破産をした場合、すべての財産が差し押さえられてしまうような誤解をされていますが、実際には以下のような財産については、法律でその処分が禁止されています。

  • 洗濯機  ・エアコン  ・掃除機 ・冷暖房器具
  • 冷蔵庫 ・電子レンジ ・瞬間湯沸かし器 ・調理器具 ・食器棚 ・食卓セット
  • 29インチ以下のテレビ ・ラジオ ・ビデオデッキ
  • 鏡台 ・整理タンス ・洋タンス ・ベッド など

パソコンなども通常、ご家庭で使っているようなものでしたら対象外となります。ただし、エアコンやテレビなど、同じものが2台以上ある場合、1台を残して差し押さの対象となります。

車については、新車やよほど高額なもの以外は、差押えの心配はいりません。中古車の場合、例え差し押さえたとしても、名義変更などの手続きが複雑だったり、保管場所のことも考え費用倒れになる可能性があるからです。

また、平成17年に破産法が改正されたことにより、財産の総額が99万円以下であれば、差押えられないこととなりました。

給与の4分の1までは差し押さえられない

では、給与が差押えられる場合、その全額が対象となるのでしょうか? 答えは、給与の4分の1までです。

これは、民事執行法に定められており、債務者であるみなさんの生活を保障するためにも、いくらお金を貸している債権者だとしても、法定控除額(税金や社会保険料)を差し引いた給与の残りの4分の3については差押えをすることができないようになっています。

また、法定控除額を差し引いた給与の残りの額が44万円を超えている場合、債権者が差押えできない額は一律33万円と決められています。

ただし、給与を全額差し押さえられてしまうケースもあります。それは、債権者が銀行であり、そこの預金口座へ給与が振込まれる場合などです。

銀行は貸金業者と違い、自行の債務者の口座に残高が残っていたり、給与の振込があれば、通常の債権回収の手段として、全額を債権と相殺してしまう可能性があるからです。

また、退職金などに関しては、差押禁止の範囲は給与の4分の3となります。尚、組合費や共済費、積立金などは、仮に給与から天引きされていたとしても、法定控除額には含まれません。

国民年金は差押えの対象外

では、差押えの対象として国民年金はどうなると思いますか? この場合、国民年金法第24条で差押えが禁止されていますので、大切な国民年金が差し押さえられることはありません。

ただし、いったん年金が口座に振り込まれてしまうと、それが年金だったのかもともとあった預金なのかの区別がつきにくいため、年金も差押えられたような形になってしまうことはあるようです。

しかし、下記のような民事執行法第153条に基づき、差押禁止債権の範囲変更を行えば、国民年金の差押えを解除することができます。

●民事執行法第153条 差押禁止債権の範囲変更

「執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない債権の部分について差押命令を発することができる」

貸金業者の中には、債務整理が開始されると差押えができなくなるため、弁護士や司法書士からの受任通知が届くと、少しでも回収しておこうとすぐに訴訟を起こす可能性もあります。

こうした場合、すぐに委任している弁護士や司法書士にすぐ連絡を取る必要がありますので、債務整理をしようと決意したら、段取りよく手続きを行わなければなりません。

いずれにせよ、債権者である銀行や貸金業者が給与差押の申し立てをすれば、勤務先へは裁判所から差押命令の書類が届きます。そうなれば、借金があることだけでなく、返済が滞り差押えまでされたことが知られてしまいます。

そうとなれば、会社にもいづらくなりますし、出世などにも影響することでしょう。ですので、「手遅れだった・・・」とならないためにも、これ以上、毎月の返済をするのが困難だと感じたら、すぐにご相談ください。