定期コラム
【コラム10】民事再生後に返済が困難になった場合
破産せずに残りの支払いが免除される制度
「ハードシップ免責」という言葉をご存知でしょうか。
民事再生の返済計画がスタートしたものの、病気やケガなどで長期入院が必要になったり、リストラをされて失業せざるを得ない状況になったりと、何らかの理由で家計の状況が変化し、支払いが困難になった場合、裁判所の免責決定を得れば、破産せずに残りの支払いが免除される制度を「ハードシップ免責」と呼びます。
ハードシップ免責を受けるには、いくつかの条件がありますが、その条件の説明をする前に、民事再生について再確認しておきましょう。
多重債務に陥ってしまった場合、その借金を整理する方法が債務整理です。
債務整理には、任意整理・自己破産・特定調停・民事再生の4種類がありますが、ハードシップ免責制度があるのは民事再生になります。民事再生とは
経営破綻のおそれがある会社を再建するための法的手続きが民事再生ですが、サラリーマンや自営業の場合には「個人民事再生」となります。ここでは、個人民事再生(以下、民事再生)についてご説明したいと思います。
借金返済が困難になってしまった債務者のみなさんが、裁判所に申し立てを行い、住宅ローンを除き大幅に減額した上で、再生計画に沿って分割返済していく債務整理が民事再生です。
民事再生は、自己破産をしなくても借金を整理し、生活を立て直すことが可能なだけでなく、所有している車やマイホームを手放すことなく債務整理を行うことが出来る点が大きな特徴となります。その他の特徴は以下の通りです。
- 住宅ローンの減額は不可。
- それ以外の借金は最低額支払わなければいけないボーダーラインとして「最低弁済額」がある。
- 減額された借金は原則3年間で分割して返済していく形となる。
- (特別な事情がある場合には、5年まで延長が可能)
- 民事再生には、「小規模個人再生」と「給与所得等再生」の2つの方法がある。
民事再生を行うための条件
マイホームを手放すことなく借金を大幅に減らすることができるとなれば、借金に苦しむ者なら誰でも民事再生したいところですが、以下の3つの条件をクリアしていなければなりません。
- 借金総額が住宅ローンを除く5000万円以下の方
- 安定した収入がある方
- 将来的に返済困難になるおそれがある方
また、月々の返済額のボーダーラインとなる最低弁済額は以下の通りです。
【最低弁済額の基準額】
- 100万円未満・・・総額
- 100万円以上、500万円以下・・・100万円まで減額
- 500万円超、1500万円以下・・・債務総額の1/5まで減額
- 1500万円超、3000万円以下・・・300万円まで減額
- 3000万円超、5000万円未満・・・債務額の1/10まで減額
ハードシップ免責が利用できる4つの条件
このようにして、民事再生により毎月の返済額を大幅に減らすことができたとしても、不意の事故や病気、リストラなど、状況の変化により家計が圧迫し、返済が困難になる可能性は誰にでもあり得ることです。
そのような場合に、裁判所の免責決定を得れば、破産せずに残りの支払いが免除される制度が「ハードシップ免責」なのです。ただし、再生計画を改め、支払う期間を延ばすことによって返済することが可能な場合は、ハードシップ免責を受けることはできません。
この制度を利用するには、以下の4つの条件を満たしていれば、ハードシップ免責の申立てが可能となります。
- 債務者の事情以外の理由によって、再生計画に沿った返済が極めて困難であること
- 再生計画で定めた借金のうち、すでに4分の3以上を返済していること。
- ハードシップ免責の決定をすることが、債権者の一般の利益に反しないこと(清算価値保障の原則)。
- 再生計画を変更しても、支払い続けていくことが困難であること。
では、支払いが困難な理由としてどのようなものが該当するのでしょうか。以下のような具体例があげられます。
- リストラによって職を失い、再就職のための努力をしたが再就職ができず収入がない場合。
- 病気などで体調を崩してしまい、再生計画に沿った返済が極めて困難になった場合。
- 自営業者が倒産し、再就職に努めたが社会情勢などで就職が困難になった場合。
ハードシップ免責の申立ての方法
ハードシップ免責を申し立てるには、民事再生を申し立てた裁判所へ、免責申立書を提出する必要があります。申立書には、返済を続けていくことができない事情などを記入し、証明する書類などを添付しなければなりません。
裁判所は申し立てに対して、債権者である貸金業者の意見を聞いた上で、裁判官が免責すべきかどうかを判断します。
なお、ハードシップ免責が認められたとしても、住宅資金特別条項を定めた住宅ローンは免責されないため、住宅ローンは返済し続けなければなりません。万一返済できなくなってしまった場合には、マイホームを手放すこととなります。
しかし、そのような場合には「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」という、住宅ローンの支払い方法を変更できる制度を利用して、月々の返済額を減らすことが可能です。
住宅ローンの返済も困難になった場合
それでは、住宅ローン特則の種類と利用するための条件について簡単にご説明しておきます。詳しくは、コラム5『マイホームがある場合の債務整理』をご覧ください。
●住宅ローン特則の種類
- 期限の利益回復型・・・通常の返済はそのまま続けながら、遅れてしまっている返済分について、あらたに期間を定めて分割していく方法。
- 弁済期間延長型(リスケジュール型)・・・住宅ローンの返済期間そのものを延ばすことで、毎月の返済額を少なくしていく方法。
- 元本猶予期間併用型・・・弁済期間延長型を利用しても返済が困難な場合、住宅ローンの支払い期間の延長と併せて、他の借金を返済している期間は、住宅ローンの返済額を少なくしてもらう方法。
- 同意型・・・上記3つの方法でも住宅ローンの返済が困難な場合、債権者となる金融機関の同意があれば、上記の支払い方法をさらに変更、アレンジしてもらう方法。
●住宅ローン特則が利用できる条件
- 住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと。
- 代位弁済が行われた場合は、6ヶ月以内に申し立てを行うこと。
- 住宅ローンを滞納し、保障会社が代位弁済を始めてから6ヶ月経過していないこと
- 住居兼住宅の場合、床面積が1/2以上であること。
今回は民事再生にかかわるハードシップ免責と住宅ローン特則についてお話ししました。たとえ条件はクリアしていなくとも、これらの制度を利用することができるケースもあります。多額の借金にひとりで悩まず、まずは無料相談をご利用の上、詳しい内容をお聞かせください。