定期コラム
【コラム8】貸金業法の対象となる貸金業者とは?
多重債務問題を解決するために行われた法改正
以前に貸金業法がどう変わったのかについてご説明をしましたが、今回は貸金業法の対象となる貸金業者について少し詳しくお話しようと思います。
貸金業法とは、もともと貸金業を届け出制から登録制に変更し、貸金業の適正な運営と貸金需用者の利益の保護を目的として制定された法律でしたが、法改正により、多重債務問題の解決と安心して利用できる貸金市場の構築のため抜本的な見直しがされました。
しかし、お金を貸す業者すべてが消費者の敵ではありませんし、きちんと法定金利を守って営業している業者もたくさんいます。
2010年6月には、総量規制などの重要な改正を含む、すべての規定が完全施行となりましたが、大きく改正された内容は以下の3点です。
- 過剰貸付の抑制
- 金利体系の適正化
- 貸金業者の業務の適正化
銀行や信用金庫は預貯金の受入れを行う金融機関
では、(3)で業務の適正が必要だといわれているのは、どのような業者が対象となっているのでしょうか。
そもそも、お金を貸してくれる業者には、どのような種類があるのか。銀行でもお金は貸してくれますが、銀行や信用金庫、農協などは貸金業者ではなく、預貯金の受入れを行う金融機関となります。
金融機関には銀行以外にも、保険業を扱う金融機関として、生命保険会社や損害保険会社などがあり、金融商品取引業を行う金融機関として証券会社などがあります。
こうした金融機関はお金を貸すこともしますが、貸金業者には分類されません。貸金業規制法2条には、次のような業を行う者を貸金業者と規定しています。
『金銭の貸付け又は金銭の賃借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付又は当該方法によってする金銭の授受の媒介を含む。・・・)で業として行なうもの』
ただし、以下のような者は例外となります。
- 国または地方公共団体が行うもの
- 貸付けを業として行なうにつき、他の法律に特別の規定がある者が行なうもの
- 物品の売買、運送、補完または売買の媒介を業とする者がその取引に付随して行なうもの
- 事業者がその従業者に対して行うもの
- 前各号に掲げるものの他、資金需要者等の利益を損なうおそれがないと認められる貸付けを行なう者
財務局又は都道府県に登録をする業者
具体的に見てみますと、金融庁によれば、貸金業法の対象となる貸金業者のことを次のように定義しています。
『お金を貸す業務を行っており、財務局又は都道府県に登録をしている業者のことを、「貸金業者」といいます。具体的には、消費者金融、クレジットカード会社などが貸金業者です』
消費者金融やクレジットカード会社以外には、以下のような業者が貸金業者となります。
- 金融の貸借の媒介業者
- 手形割引業者
- 不動産を担保とする金融業者
- 信販会社
- 総合リース会社 など
ただし、同じクレジットカード会社であっても、キャッシングでお金を借りた場合には、貸金業法が適用されますが、ショッピングの際のリボ払いや分割払い、ボーナス払いについては、貸金業法は適用されませんので、債務整理の対象とはなりません。
ヤミ金業者と貸金業者の違いとは?
では、ヤミ金業者と貸金業法でいう貸金業者の違いは何なのでしょうか。 そのもっとも大きな違いは、貸金業法に基づく登録を受けているかどうかです。違法金利という点では、以前は登録を受けた貸金業者でさえ、違法ではあるが罰則を科せられないいわゆる「グレーゾーン金利」でお金を貸していましたので、それだけでは判断ができません。
では、さらに具体的に業者の一例を挙げておきましょう。以下の業者は、貸金業法に基づき登録をしている貸金業者です。
アイフル、アコム、プロミス、新生フィナンシャル(レイク、GEコンシューマー・ファイナンス、コーエークレジット)、シンキ(ノーローン、アルコ)、三洋信販(ポケットバンク)、ライフ、SFコーポレーション(三和ファイナンス)、CFJ(ディック、ディックファイナンス、アイク、ユニマット、ユニマットライフ)、セゾンカード(クレディセゾン)、オリコカード(オリエントコーポレーション)、ジャックスカード、イオンカード(イオンクレジットサービス)、ゼロファースト、JCB(ジェーシービー)、VISAカード、クオークカード(セディナ) など
悪徳業者かどうかの判断のひとつとして、貸金業者として登録しているかどうかがあります。上記に挙げた業者は、法改正により現在は上限金利を守って貸付を行っているところがほとんどですので、やはり登録業者かどうかが目安といえるでしょう。
事務所に固定電話がなければ貸金業者として登録できない
貸金業をはじめる際の登録は、貸金業規制法3条に基づき行います。
例えば、東京都内に営業所や事務所を3カ所オープンするとしましょう。同じ都道府県内であれば、都道府県知事の登録となります。もしも、本店を東京、支店として千葉と埼玉にオープンするとしたら、2カ所以上の都道府県にまたがってオープンする場合は、財務局の登録となります。営業所や事務所をオープンする条件として
- 固定電話を設置できる独立した事務所があること
- 賃貸借契約の場合、契約書に貸金業の事務所として使用する旨の記載が必要となり、記載がない場合は使用承諾書を添付すること
ですので、問合せ先などとして携帯電話しかない業者は、登録していないヤミ金業者だと思ったほうが賢明です。
また、法改正により、借入残高が年収の1/3を超えている場合、貸金業者は新規の貸付を行えば違法となります。ですので、もしも年収の1/3以上の借入をOKとする業者であれば、登録していない業者の可能性は高いでしょう。
ただし、年収の1/3以上といっても、貸金業者以外からの借入や住宅ローン、車のローンなどは対象外となります。
登録せずに営業していれば懲役や罰金が科せられる
ヤミ金など無登録で営業している業者には、5年以下の懲役もしくは1千万円(法人は1億円)以下の罰金が科せられます。また、貸金業者の社員は身分証の携帯が義務付けられていますので、登録業者か疑問がある場合は、身分証の提示を求めたほうがいいでしょう。違反をすれば、業者には100万円以下の罰金刑が科せられています。
登録業者かどうかを確認するには
- 財務局長か都道府県知事の登録を受けているか?
- 登録番号を答えられるか?
- 上限金利(年20%)を超えていないか?
- 固定電話番号を持っているか?
などがあります。また、登録番号を答えたとしても架空の番号である可能性もありますので、疑わしい場合は管轄の財務局か都道府県の貸金業担当課に問合せましょう。
例え登録業者であっても法定金利を超えていれば違法ですので、くれぐれもお金に困ったからといって、安易に高金利での借入は行わないことが大切です。