借金の債務整理トップページ > 【コラム4】貸金業法はどう変わったのか?

定期コラム

【コラム4】貸金業法はどう変わったのか?

多重債務問題の解決と安心して利用できるための改正

「多重債務を抱えている方なら、一度は聞いたことがある法律『貸金業法』。
旧称「貸金業の規制等に関する法律」の略称「貸金業規制法」「貸金業法」と呼ばれていた法律が、2006年の改正に伴い、2007年12月19日の第3次施行日より、正式名として『貸金業法』と改められました。

貸金業法とは、もともと貸金業を届け出制から登録制に変更し、貸金業の適正な運営と貸金需用者の利益の保護を目的として制定された法律です。

では、いったいどのような点が改正されたのでしょう。
これまで段階的に施行されてきた新貸金業法ですが、2010年6月18日、総量規制などの重要な改正を含む、すべての規定が完全施行となりました。

今回の改正目的は、多重債務問題の解決と安心して利用できる貸金市場の構築を目指しています。近年、多重債務を抱え自殺まで追い込まれる債務者が増加しており、社会問題としてもクローズアップされてきました。こうした問題を解決するには、従来の法律を抜本的に改正する必要があったのです。

夜間に加えて日中の執拗な取立て行為なども規制強化

新しくなった貸金業法で大きく改正されたのが、以下の3点となります。

  1. 過剰貸付の抑制
  2. 金利体系の適正化
  3. 貸金業者の業務の適正化

この3つの中で、お金を借りる債務者にとって重要なのが、(1)(2)になります。(3)については、債権者となる貸金業者に対しての改正内容で、貸金業を営む条件などについて規制されています。ただし、この中でも債務者にとって知っておくべき規制があります。

それは、貸金業者が行うさまざまな行為についての規制で、例えば夜間に加えて日中の執拗な取立て行為などの規制強化であったり、連帯保証人に対して、催告・検索の抗弁権がないことの説明を義務付けたりする行為についての規制です。

つまり、夜間だけでなく日中でもしつこく催促の電話を入れたり、債務者の自宅や会社を訪問したりすることも規制するとなりましたので、もしもこのような取立てになっているのであれば、違法だということです。

借り過ぎ・貸し過ぎ防止のための総量規制とは?

それでは、(1)(2)について少し詳しくご説明しておきましょう。 まず(1)の過剰貸付の抑制についてですが、これは借り過ぎ、貸し過ぎを防止するための内容で、改正により「総量規制」が導入されるようになりました。

総量規制とは、借入総額に制限を設ける規制で、貸金業者から個人が借入を行う場合に適用されますので、銀行(信用金庫、信用組合、労働金庫、農協等)からの借入や法人名義の場合は適用外となります。

住宅ローンなどのように返済期間が長く低金利の借入についても適用外となる他、総量規制には、「除外」「例外」となるケースもあります。

●除外となる貸付(施行規則第10条の21第1項各号)
*不動産購入のための貸付(そのためのつなぎ融資を含む)
*不動産に改良のための貸付(そのためのつなぎ融資を含む)
*自動車購入時の自動車担保貸付
*有価証券担保貸付
*高額療養費の貸付
*売却予定不動産の売却代金により返済可能な貸付
*金融商品取引業者が行う500万円を超える貸付
*融通手形を除く手形の割引
*貸金業者を債権者とする金銭賃貸契約の媒介

●例外となる貸付(施行規則第10条の23第1項各号)
*緊急の医療費に対しての貸付
*個人事業に対する貸付
*配偶者と併せた年収の1/3以下の貸付
*預金取扱金融機関からの貸付を受けるまでの「つなぎ資金」に係わる貸付
*顧客に一方的に有利となる借換え
*社会的通念上緊急に必要と認められる費用を支払うための資金の貸付

尚、個人への貸付については、以下のような規制を設けることで、借り過ぎ・貸し過ぎを防止することとなります。

*総借入残高が年収の1/3を超える場合、新規の借入は禁止
*1社からの借入残高が50万円超、または借入残高の総額が100万円を超えて借入をする際、基本的に年収などを証明する書類を提出。

ただし、これは貸金業者に対して規制をしている法律ですので、もしも総借入残高が年収の1/3を超えているのに、新規で借入を行ったからといって、債務者が行政処分や刑罰を科せられることはありません。あくまでも、債権者である貸金業者が処罰を受けることとなります。

年収などを証明する書類には、次のようなものがあります。
・源泉徴収票  ・所得証明書類(区役所発行)  ・支払調書  ・納税通知書 
  ・納税証明書  ・確定申告書  ・青色申告決算書  ・収支内訳書 
  ・年金証書通知書  ・給与の支払明細書(直近2カ月以上のもの) 

上限金利の引き下げ

次に(2)の金利体系の適正化については、従来29.2%だった法律上の上限金利が引き下げられ、「グレーゾーン金利」と呼ばれていた貸金業法上の「みなし弁済」制度が廃止となりました。改正後の上限金利は以下の通りです。

*利息制限法の上限金利・・・貸付額に応じ15~20%

  • 10万円未満・・・・・・・・・・ 20%
  • 10万円以上~100万円未満・・・・ 18%
  • 100万円以上・・・・・・・・・・ 15%

*出資法の上限金利・・・・・・・・・・・・・20%

こうして決められた上限金利を超過した利息契約を結べば、それが利息制限法に違反した場合ならば行政処分の対象となり、出資法に違反していれば刑事罰の対象となります。

尚、従来出資法の特例として認められていた年利54.75%の金利は、法改正により廃止されました。また、ヤミ金融対策の強化として、109.5%を超える超高金利の貸付や無登録営業などに対して、懲役が5年から10年へと強化されました。

ちなみに、新しい貸金業法は5段階で施行されましたが、その内容は以下の通りとなりますので、参考までに記しておきます。

≪改正貸金業法の段階施行の実施について≫
  • 第1次施行・・・2006年12月20日 *附則66条のみ
  • 第2次施行・・・2007年1月20日 *改正法1条、6条関係
  • 第3次施行・・・2007年12月19日 *法律の名称を「貸金業の規制等に関する法律」から「貸金業法」に変更。
    *業者の登録要件強化
    *行為規制強化
    *監督庁の監督強化
    *貸金業協会の取扱の変更
  • 第4次施行・・・2009年6月18日施行 *業者の財産的基礎要件の引上げ
    *貸金業務取扱主任者資格制度の創設
    *指定信用情報機関制度の創設
  • 第5次施行・・・2010年6月18日施行 *貸金業務取扱主任者の必置
    *財産的基礎要件の再引上げ
    *行為規制の強化
    *過剰貸付規制の強化
    *みなし弁済制度廃止
    *利息制限法改正
    *出資法改正