借金の債務整理トップページ > 【コラム】遊興費で破産する人の心理(110527)

コラム

遊興費で破産する人の心理

前回、借金をすると言うことの心理的な重圧について少し触れました。今回はこの点についてもう少しだけ掘り下げてみたいと思います。

債務整理を選ばれる方の中には「遊興費に充てるために借金を繰り返し、返せるあてがなくなる」と言うパターンの方が多々見受けられます。遊興費のために借金をされる方の場合、原則的には自己破産が適用されることが難しいです。このため具体的には任意整理によって債務を圧縮したとしても、月々の支払いを投げてしまい、再び借金生活に逆戻りと言う方が少なからずおられるようです。当所としましては借金のない綺麗な身に戻るための道筋を作ったにも関わらず、そこを辿るのが嫌だと申されるのは誠に残念でなりません。例えばインターネットで検索をしますと「借金をする人の特徴」などと言うような文言があります。

この一例を挙げると

・部屋が汚い
・時間にルーズ

  などと言う言葉が散見されます。

当所の実体験上、これは「借金を返せない人に多い特徴」としてもあてはまります。世の中には「形から入る」と言うこともあるために、上述のような点を改善してゆくことで、借金生活から脱却することも不可能ではないかもしれません。それによって心理的にも改善されてゆく点も多々あると思われますので。しかしその根本である借金をする人の心理について少しだけ思いを巡らせてみますと「先の事を見通すことがあまり得意ではない」と言う原因に行き着くのではないでしょうか。

「今後を考える余裕などない」と言う言葉は、必ずしも客観的に観察をせずとも借金をされた方ご自身がそう述べられることも少なくありません。特に一度借金を負ってしまうと急激に視野が狭まり、四六時中返済のことを考えるようになります。もしそうでない場合、返済からまるっきり目を逸らせてしまい、破産まっしぐらとなってしまいます。しかし「では、なぜそのような状態に陥るのか」の理由について触れられたものは少ないと思います。

利息制限法が適用される少し前まで、皆様方も「少し生活費の足しにしようと思ってサラ金でお金を借りたら、あっと言う間に雪だるま式に……」などと言う言葉を聞いたことはあると思います。これは複利のからくりの恐ろしさについて触れたものですが、同時に借金を返済できなくなる人の心理も述べています。

お金とは「誰にでも通じるものの価値」のことです。これは一般的にはそうですが、心理的にはまったく意味合いが異なります。大金持ちの人にとっての100万円と借金生活をしている人にとっての100万円ではまったく意味合いが異なりますよね? 同様にお金は増えることと減ることではまた意味合いが異なるのです。例えば今皆さまのお手元に1万円しかなかったとしましょう。サイコロを投げて奇数が出れば1万円増えます。偶数が出れば1万円失います。さて1万円増えたとしたら飛び上がって周りの人と抱きしめあって喜ぶでしょうか。そうではないと思います。しかし1万円失ったらどうしますか。「もう無一文だ。明日からのご飯はどうしよう」とばかりに、絶望に膝をついて身をよじるのではないでしょうか。ましてやそれが借金だとしたら……。このように、お金と言うものは同じ金額であるにも関わらず、手に入ることと失うことの心理的な重みがまったく異なるのです。

では、これを応用するとどうなるでしょうか。例え誰であっても、初めから意味もなく満額借金する人はほとんどいないはずです。最初は「お給料前だけどちょっと一杯飲みたいから」と言った気持ちでお金を借りても、いざ返す段になると手持ちのお金が減ることが急に惜しくなる。「まだ少し後でもいいかな」と言うことで使い果たしてしまい、そのうちに手持ちに困り、また借りるのです。なぜなら借金があるにも関わらず、お給料は変わらず、お金の使い道も先月と変わらないため。そのため、また月末頃に借金をする。実際のところ、借りて増えたお金と言うものは大して嬉しいものではないのです。ただ足りないから補填しているだけなのです。しかしこれを繰り返してしまうことで途方もない速度で借金は増えてゆきます。

このように「まだ少し後でも何とかなるかな」と言う人間心理につけこむものが、借金。ですので、借金地獄に陥る心理と言うものは実は夏休み前の宿題とほとんど同じ。別段特別なことではないのです。

では、さらにその仕組みを綺麗にひとまとめにしたものを考えてみましょう。1万円を銀色の玉に交換します。そう。パチンコです。あっと言う間に玉は減ってゆきますが、あるとき低い確率で大当たりが出ますよね。たちどころにファンファーレがなって、電飾がビカビカ光り、おめでとうございますと大騒ぎされて嬉しくなる。しかし、実際には大して玉が増えているわけでもありません。損失分の穴埋めとして換算すれば微々たるものです。

これを心理的に考えると、金額とは別個にあれくらいまでに周りが煽りに煽って射幸心を沸き起こさせないと、実は損した金額分の心の痛みには釣り合わないのです。そう考えてみるとギャンブルの大当たりと言うものはお金が増えることではありません。借金から解放される瞬間を周りが飾り立てているだけなのです。

これに気づかないと、すってんてんになるまでお金を使い果たし、財布の中がからっぽになってしまいます。外に出てみると「ああ、夕陽が綺麗だな……」となんともいえない寂寥(せきりょう)たる気分に陥ります。そしてふと気づくと、目の前に消費者金融のはでな原色の看板が……。この心の痛みから解放されて、元手を取り返せるかもしれないと言う気持ちがふつふつと沸き起こってくるのではないでしょうか。

このように人の心理を利用して、上手に借金を重ねさせるトラップが世の中にはごまんと存在しています。借金で破産をする心理は何も特別なものではないのです。